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指定管理者制度の制度設計

野崎 孝男

1 はじめに

 「官から民へ」「地方で出来ることは地方へ」という国が進める2大改革は「中央集権体制から自立した地方へ」そして「公共サービスの独占的官製市場の民間への開放」という方針に沿ったものである※1 。そして国が進めるこれらの改革は地方公共団体(以下、「自治体」)が直面している行政改革とも密接不可分のものであり、2003年9月2日に施行された地方自治法の一部を改正する法律(以下、「改正法」)で導入された「指定管理者制度」は自治体が行う公共サービスの中心となる公の施設の管理の民間開放を推し進める起爆剤として誕生した。
 指定管理者制度導入の背景には、民間においても十分な公的サービスの提供能力が認められるものが増加していることや、多様化する住民ニーズに効果的・効率的に対応するためには、民間事業者の有するノウハウを広く活用することが有効であることなどがあげられる。また、国と地方を合わせて700兆円を超える逼迫した財政を立て直すために民間を活用すると言う国が進める「民間でできることは民間で」という方針を、公的主体が主に管理してきた公の施設の管理面で推し進める狙いもある。
 では、指定管理者制度とはどのような制度なのか。その特徴は@受託主体が株式会社や有限会社などに拡大(法人格は必ず必要ではない。ただし個人は不可)、A複数年にわたる指定期間、B条例の定めるところにより、公の施設の使用許可権限の付与が可能、C指定管理者の指定に当たっては議会の議決を要する、D指定管理者の指定は行政処分のため、地方自治法の契約に関する適用がない※2 。の5点があげられる。
 特に、これまでの「管理委託制度」では土地改良区等の公共団体、第3セクター等の公共団体の出資法人、農協、漁協、社会福祉法人、自治会、町内会等の公共的団体などに受託主体が限定されていたが、指定管理者制度では「法人その他の団体」であれば指定管理者とすることが可能となった。具体的には株式会社、有限会社などの民間企業に限らず団体であれば法人でなくとも個人でない限り指定管理者の対象とすることができる。そのことは、公的主体が独占しがちだった公共サービスの民間主体への開放を意味するものでもある。
 すでに指定管理者制度を先行して導入している自治体の事例としては、全国で初めて公立図書館の運営に指定管理者を導入しNPO法人による運営を実現した山梨県山中湖村の山中湖情報創造館や横浜市の指定期間を30年とした市立港湾病院がある※3
 改正法では、従来の管理委託制度自体がなくなることから指定管理者制度への切り替え期間として2008年9月(法律施行後3年以内)までの猶予期間が設定している。そのことから自治体は2008年9月までにこれまで管理委託制度を適用していた公の施設を直営(業務委託制度含む)にするのか条例を制定し指定管理者制度を導入するのかを決定しなければならない。しかし、指定管理者制度に対し国は詳細な手続や基準などを示す法令、通達、指導等の雛形を示してはいない。それは、詳細な制度設計自体を自治体の自主的な判断と法務能力に任せているからといえる。しかし、モデル条例やマニュアルを国が示さないことに対し多くの自治体は迷いながら試行錯誤を繰り返している状態にあるといえる。すでに指定管理者制度を導入している自治体の条例を見ても、公の施設の設置条例の一部を改正して対応している自治体や、通則的な手続条例を制定している自治体など対応が分かれている。また個別の条例を見ても基本的事項だけを定めている条例から、詳細な手続を定めている条例までその内容は千差万別であり、自治体ごとの指定管理者制度に対する姿勢を条例からはっきりと見ることが出来る。そのことから指定管理者制度は自治体の政策法務能力が問われている制度でもあると言える。分権時代は指定管理者制度のような国が制度の大枠だけを示し、詳細な制度設計は自治体に委ねられる制度が多く出てくることが予想される。
 本稿は以下で、自治体が国からの助け舟がない状態で詳細な制度設計を本格的に行う初めてのケースであるといえる指定管理者制度を各地の自治体の条例を比較し分析することを目的とする。

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2 指定管理者制度の導入の経緯

 バブル経済崩壊による経済の停滞は国や自治体の財政状況を急激に悪化させた。そして肥大化した行政部門の改革は急務となり官製市場の民間開放が急速に進められた。そこで公の施設の管理を広く民間に開放することを可能にした指定管理者制度が2003年9月に誕生した。同年5月27日に開催された衆議院総務委員会の会議録を見ると指定管理者制度の導入の理由が以下のように述べられている※4 。一つは、「住民のニーズが多様化」により、それに「効果的、効率的に対応するためには、民間の事業者のノウハウを広く活用することが有効である」。二つ目は、「公的主体以外の民間主体においても十分なサービスの提供能力が認められるものが増加している」ということ、複数の自治体から「第三セクター以外に、民間企業が地方公共団体の設置した公の施設を管理できるようにしてほしい」との提案が出されたことが理由として挙げられている。また、指定管理者制度のメリットについては、「指定管理者の指定は、普通は、複数の候補の中から、最も施設の稼働率の向上が見込まれることや利用料収入の増加が見込まれるもの、経費の縮減が図れる管理が実施されるものを選択することが可能になり、地方公共団体にとって財政負担の軽減や利用料金の引き下げなども期待できる」と述べられている。
 自治体にとって青天の霹靂のような指定管理者制度の導入だったが、指定管理者制度の原型となる議論は1996年12月の行政改革委員会で示された「民間で出来るものは民間に委ねる」、「国民本位の効率的な行政を実現する」、「説明責任(アカウンタビリティ)を果たす」という方針を盛り込んだ「行政関与のあり方に関する基準」にまで遡ることができる。そして2001年6月の経済財政諮問会議で閣議決定された「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(骨太の方針)」において地方自治及び公務市場開放の施策として、官民の役割分担の中に、建設、維持、管理、運営、についても可能な限り民間に任せることを基本とするという内容が明確に示された。
 それを受けて2002年7月の総合規制改革会議では「中間とりまとめ―経済活性化のための重点的に推進すべき規制改革―」 の「民間参入・移管拡大による官製市場の見直し」の中で管理委託制度の見直しが具体的課題として議論され、公の施設の受託管理者の拡大について「地方自治法では、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設を「公の施設」と規定し、その「管理」の主体を地方公共団体及び地方公共団体出資の法人(第三セクター)等に制限している。しかしながら、地方自治法は、条例で公の施設の管理に関する事項を定めることを規定しているため、条例等により、管理受託者の管理に関する事項が実質的に規定してあれば、管理受託者の範囲を制限することは理由がない。より効率的な公共サービスを提供するためには、その提供方法の多様化を図ることが必要であり、「公の施設」の管理の担い手を、民間事業者等多様な主体に拡大すべきである。
 また、「公の施設」の管理とは、管理権限を言うに過ぎず、現行法の下においても、現実の管理業務を行うことは地方公共団体及び地方公共団体出資の法人等に限定するものではなく、広く民間へ委託することを容認しており、地方公共団体に留保されている権限は外形上の料金決定に限られるとの指摘もある。しかし、地方公共団体によってはこの趣旨は必ずしも徹底されておらず、「公の施設」であるがゆえに、現実の管理業務を自ら行うほかはないとの誤解も多い。上記のことから、まず、「公の施設」における管理とは、公金としての施設の利用料金の徴収とその料金決定権のみが地方公共団体等に留保されているに過ぎないことを直ちに周知徹底すべきである。
 さらに、より広範囲に民間への委託を実現するため、当該外形要件の考えを廃止し広く管理委託の考えを認めるべきであり、一定の条件での料金の決定権等を含めた管理委託を地方公共団体及び地方公共団体出資の法人(第三セクター)等のみならず、民間事業者等に対して認容できるように地方自治法の改正についても検討を行うべきである、と民間事業者の参入を促している。
 その後、同年12月の総合規制改革会議において取りまとめられた「規制改革の推進に関する第2次答申−経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革−」(以下、「2次答申」という)の「民間参入の拡大による官製市場の見直し」の中で「地方自治法の規定の趣旨は、施設の利用料金の決定と収受は民間に委託することができないというにすぎず、それ以外の管理行為については広く民間へ委託することが可能であることを直ちに地方公共団体に周知徹底すべきである。また、一定の条件の下での利用料金の決定等を含めた管理委託を、地方公共団体の出資法人等のみならず、民間事業者に対しても行うことができるように現行制度を改正すべきである。」と指摘されている。また、2次答申のなかでは「公共サービスの中には公権力の行使を伴うものがあるが、そのことのみをもって民間参入の検討の対象外とする事は相当でなく、『公権力の行使は全て公務員が自ら行わなければならないのか』という問題意識を持って民間参入を進めていくことが重要である。特に公権力の行使に当たると考えられる事務・事業についても、政府部門による裁量の余地が比較的少ないものについては、その執行を積極的に民間にゆだねることは可能である。また、裁量の余地が比較的大きいものについては、裁量行政の排除の観点からルール化や基準化を推進すべきであり、そのようにしてルールと基準が明確になれば、積極的に民間にゆだねることが可能である」として公権力の行使についても民間にも任せることが可能であるのではないかという問題意識が示されている。この方針が公の施設の利用許可を可能にした指定管理者制度の誕生に大きく影響していると考えられる 。その後、翌年の3月には公の施設の管理制度の改正を盛り込んだ規制改革推進3カ年計画の再改定が行われ、同年6月に国会で改正法が成立、同年9月に指定管理者制度を盛り込んだ改正法が施行された※5

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3 指定管理者制度の概要

@ 条例制定事項

 改正法では、指定管理者制度の導入にあたっては自治体は「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であって当該自治体が指定するものに当該公の施設の管理を行わせることができる」(自治法244条の2の第3項)とされている。さらに、自治法244条の2の第4項は「指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲その他必要な事項を定めるものとする」とされ、次に掲げる事項は条例で定めなければならないとされている※6
 @指定管理者の指定の手続(申請手続、選定基準、事業計画の提出等)A指定管理者が行う管理の基準(休館日、開館時間、利用制限の要件等)B業務の範囲(施設、設備の維持管理、個別の利用許可等)Cその他必要な事項。
 なお、条例で規定すべき事項については総務省通知※7 において指定管理者の選定に当たり住民の平等利用の確保や事業計画に沿った管理を安定して行う能力を有しているなどの選定基準を定めておくことが望ましいとされている。ここでいう条例は指定管理者の指定の手続に関する通則的な条例を指すものではなく、個別の公の施設の設置条例(以下、「設置条例」)に上記の@〜Cまでの事項を規定することで対応することも可能である。逆に個別の公の施設の設置条例に上記の@〜Cを規定しない場合は「指定管理者制度の手続」に関する通則的な条例(以下、「通則条例」)を定めなければならない。設置条例による対応か通則条例による対応かどちらの方法を選択するかは自治体の判断にゆだねられている。 
 しかし、既存の設置条例で対応する場合には、指定の手続などの事項をあらかじめ定めておく必要があり、設置条例の一部を改正する条例を設置条例ごとに議会の議決を要することになる。いずれの方法を選択するにしても指定管理者制度を導入する際には条例改正の議決と指定管理者の指定の議決という2度の議決を必要とすることになる。いずれにしても指定管理者制度を導入するフローとしては、@対象となる公の施設に係る設置条例または通則条例の条例制定・改正、A指定管理者の公募・選定、B指定管理者の指定、C協定等の締結、という流れになる。なお、@、Bについては議会の議決を要する。
 また、指定管理者の選定については「指定の申請に当たっては複数の申請者に事業計画を提出させること」と総務省通知で示されていることから複数の事業者による公募が想定されていると見ることができる。法令上複数の事業者による公募が義務づけられているものではないが、東京都が作成した「指定管理者に関する東京都指針」※8 では募集の方法、指定期間も条例に規定することが望ましい事項と明記されており、自治体としての方針を明確に示している。そのことから条例には事業者の選定にかかる自治体の方針を明確に規定しておくことが望ましい。
 しかし、実際にどのような選定をするかは自治体の裁量に任されているため、これまで管理委託を行ってきた団体・法人が活動実績や専門性などを理由にそのまま指定管理者になる事例もある。また、指定管理者の指定の取消などにより早急に新たな指定管理者を選定する必要が生じた場合などは公募をする期間がない場合も想定される。そのことから「公募によらない指定管理者の候補者選定等」を条例に定めておくことも必要だと考えられる。


A 指定管理者の受託主体

 公の施設の管理委託については従前の管理委託制度では、公共団体、公共団体が2分の1以上を出資して設立された公共団体の出資法人、公共的団体に受託主体が限定されていた。指定管理者制度の受託主体については、自治体は指定管理者の指定をしようとするときは、あらかじめ議会の議決を経なければならない。(自治法244条の2の第6項)という規定しかなく、受託主体の範囲については特段の制約はない※9 。指定管理者の受託主体の範囲については、「自治体が指定する法人その他の団体に公の施設の管理を行わせるもので、その対象は民間事業者等が幅広く含まれるものであること」と総務省通知でも明示されている。受託主体の範囲の拡大に関しては、公の施設の管理の効率的かつ効果的な管理を実現するため、民間事業者による管理を可能にするもので、効果的・能率的な管理や住民サービスの向上に資するために公の施設の使用許可の権限も行使できるようにされている。  
 また、受託主体は法人その他団体と規定されていることから、法人格は必ずしも必要ではないが個人を指定することはできないとされている。
 なお、学校教育法など個別法の法律において公の施設の管理主体が限定される場合には、指定管理者制度を導入できない場合もある。また、管理主体が限定されていない場合であっても、指定管理者の管理業務の範囲や職員の配置等について、個別の法律等で制約されている施設に関しては個別法の範囲での管理となる※10


B 利用料金制

 指定管理者は従前の管理委託制度と同じように自治体が適当と認めるときは、公の施設の利用料金を収受することができる。利用料金の額については、条例の定めるところにより、自治体の承認を受けて指定管理者が定めることになる※11 。(自治法244条の2の第8項及び第9項)また、利用料金は、自治体の収入ではなく、指定管理者の収入となることから自治体の歳入として予算や決算に計上されることはない。
 これまで民間企業が公の施設の管理を行う場合、業務委託契約に基づく経費の範囲内での管理運営であり、施設の利用料金などの収入は、自治体の歳入となってしまうため民間事業者が経営努力を発揮しづらい環境にあった。利用料金制は受託事業者が創意工夫による経営努力を行って施設の利用を増やし利用料金の収入増により利潤を得ることが可能となることで、受託事業者の経営努力へのインセンティブ的な側面を引き出し、経営努力を促す動機付けの仕組みといえる。しかし、利用料金の設定については条例の規定の範囲内で指定管理者が自治体の長の承認を受けて決まることから指定管理者の主体性を認めつつも自治体の方針の範囲内での利用料金の設定になるといえる。
 また、利用料金が指定管理者の利益となることから利用料の不払いに対する強制徴収を指定管理者が行えるかどうかという問題が発生する。これに関して総務省通知の例示では、利用料の強制徴収(自治法231条の3)に関して指定管理者に行わせることが出来ないと示されている※12 。しかし、本来指定管理者の収入となるべき使用料が不納欠損となり指定管理者は損害をこうむることになる。ここで重要なのは使用料の強制徴収ができないというのは総務省通知の例示であり、法律で禁止されているわけではない。そのことから自治体の政策的判断により条例で可能にすることもできると考えられる※13
 なお、利用料金のすべてを指定管理者の収入とするのではなく、利用料金の一部を自治体の収入とすることもできる。葛飾区では「寅さん記念館」への指定管理者制度導入の際に委託料0円、さらに利用料金からの収入の一部を葛飾区へ返還することを提案した事業者が指定管理者に選定されている※14 。練馬区でも公共自動車駐車場の指定管理者の公募条件に一定額を超えた利用料金は自治体の収入とするといった内容を明記している。


C 指定の期間

 指定管理者による公の施設の指定期間は自治法に、「指定管理者の指定は、期間を定めて行うものとする」(自治法244条の2の第5項)と規定されており特段の期間の定めはない※15
 これまで民間事業者でも可能であった清掃などの業務委託では単年度ごとに契約を行う形を予算上行わなければならなかった。また、毎年度ごとに契約を行うことから民間事業者にとっては不安定な環境での事業となる側面も否めず、長期にわたる経営計画や人材の採用、施設管理のための投資などが困難な面があり民間のノウハウを生かすことが難しかった。複数年の契約により単年度での委託料の差金決済等の必要も無くなることから契約業務に際する事務の効率化にも寄与することにもなる。
 一方、指定管理者制度では最小のコストで最大の効果をあげることも求められており、長期的に公の施設の管理を指定管理者に委任することで民間の持つ力を最大限引き出すための手段として複数年の管理を可能にしていると考えられる。実際の指定の期間としては合理的な理由もなく長期間の指定を行うことは指定管理者の管理に対する検証と競争環境の導入という観点から避けるべきであり、自治体の政策判断や施設の目的を勘案して期間を定めるべきである。また、指定の期間については議会の議決の際には指定期間を明示することが定められていることからも、指定の期間については施設の特徴や目的にあわせた合理的な期間を定めることが必要である。
 2004年6月1日現在で指定管理者制度を導入している施設の指定期間を見ると3年が35.4%、1年が21.2%、5年が17.4%、10年以上が10.5%、2年が9.8%となっている。30年の指定期間を設定した横浜市の市立港湾病院のような事例もあるが、大半が5年以内とされている※16


D 指定管理者の権限

 指定管理者には条例で定めるところにより、行政処分に該当する使用許可についても管理権限として行わせることができる。ただし、「公の施設」の未払い使用料の強制徴収※17 、売店や自販機の設置など行政財産の目的外使用※18 、不服申し立てに対する決定等、法令により自治体の長のみが行うことができる権限については、これらを指定管理者に行わせることはできない。強制徴収についての説明は利用料金制の項にて述べているが、ここでは行政財産の目的外使用と不服申し立てに対する決定について述べることとする。
 指定管理者制度導入の目的には、民間の活力を公の施設に導入し公共サービスの向上とコスト削減を同時に実現することが掲げられている。一方で公の施設は、「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」(自治法244条の1)とされており施設を設置した自治体の住民の利用に供するものであることが求められている。そのことから指定管理者が収益向上を理由に自由に施設の管理・運営をすることはできない。
 横浜市区民文化センターや相模原市男女共同参画推進センターのように条例において目的内使用の範囲を明確に規定しているところもある※19 。また、設置条例において業務外使用の禁止を明確に規定している例もある※20 。いずれにしても協定書等で目的外使用、目的内使用を明確化しておくことが望まれる。なお、指定管理者は清掃、警備といった個々の具体的業務を第三者に委託することができる。しかし、管理にかかる業務を一括して更に第三者へ委託することはできないとされている※21
 次に、施設の利用許可・不許可、利用許可の取消及び利用の制限・停止等の行政処分行為となる公権力の行使が指定管理者に委ねられることになることからその運用には細心の注意が必要となる。指定管理者に使用許可を認めた場合、例えば、施設利用の申請書の宛名や発信者名は「市長」ではなく使用許可を行う指定管理者名となることから「市立○○指定管理者」という表記になる。なお、指定管理者の行った施設の利用権に関する処分の不服申立てについては、指定管理者が第一の処分者であるため直近上級庁である自治体の長に対する審査請求として扱われる。
 使用許可等の公権力の行使に関しては、国家賠償法1条が適用され、指定管理者は「公務員」の立場となり自治体が賠償責任を負うことになる。しかし、実際は自治体と指定管理者が協議して賠償の負担を分け合う形になることが想定されることから、賠償の負担割合は自治体と指定管理者双方が事前に協定書で明らかにしておくことが望ましい。また、自治体と指定管理者の両方が被告となった場合の債務は不真正連帯債務と解されている(最判昭57年3月4日判例時報1042号87貢)。その場合も被害総額は変わらないので自治体と指定管理者での話し合いで被害額の負担が決まると考えられる※22 。一方で指定管理者の業務が高度専門的な業務の場合は自治体に訴訟を起こしても指定管理者のみの責任となる可能性もある(ハルム保育園事件・地判平2年10月29日)。
 なお公の施設の設計・建造上の問題や維持・修繕等が原因で利用者に損害が生じた場合は、設置又は管理において「通常有すべき安全性」が欠けていたこととなることから国家賠償法2条が適用され設置者たる自治体が賠償責任を負う。

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4 自治体の条例比較

 指定管理者制度の導入に当たっては、安定して継続的に事業を行える事業者をどのようにして選定していくのかが最大のポイントと言える。そのことから事業者の選定が指定管理者制度の成功を左右する試金石でもあることから、事業者の選定方法などを条例により明確にしておくことが必要と考えられる。「指定管理者制度」を規定している自治法244条の2の第4項では「指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲その他必要な事項を定めるものとする」されている。これは、法律で担保されていない部分を条例で補うことを目的としていると言えるが、「指定管理者制度」を導入する公の施設の設置条例を個別に改正して対応するか、包括的な手続条例で対応するのかの判断は自治体にゆだねられている。そのことから通則条例、設置条例のいずれで対応するにしても指定管理者制度を有効に活用するためには、自治体の創意工夫により指定の選定の公平性・透明性の確保、個人情報の保護、事業の継続性の担保など多くの点を克服しなければならない。本章では先進的に取り組んでいる自治体の条例を比較することとする。


@ 公募等による指定の手続の規定

 指定管理者制度を規定している自治法244条の2の第4項には「指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準及び業務の範囲その他必要な事項を定めるものとする」とされ指定管理者の指定の手続、指定管理者が行う管理の基準、業務の範囲、その他必要な事項の4つを定めなければならないとされている。しかし、条例で規定すべき事項については総務省通知において指定管理者の選定に当たり住民の平等利用の確保や事業計画に沿った管理を安定して行う能力を有しているなどの選定基準を定めておくことが望ましいとされていることから、自治体としても、選定手続に鋭意工夫をこらす必要がある。
 仲南町では、設置条例ごとに施設の基本方針や管理運用の基準、行政処分等の権限を含む業務の範囲等を策定しなければならないと通則条例において明確に規定している。
 京都市条例では指定を行政処分とみなし選定と同時に、非選定者には、指定管理者に指定しない旨の処分をするものとしている。これは、指定管理者の指定を行政処分として構成し、不服申し立て及び訴訟の対象として明記しているものと考えられる。また、指定したことの通知は、議会議決を経た処分なので行政手続の適用外となることから、指定しないことの通知は、申請拒否処分に当たる。そのことから京都市条例では指定という行政処分に対する方針を示しているといえる。
 須崎市条例では公募によらない選定の際の条件を明記している。公募によらない規定は多くの自治体で見ることができるが、須崎市条例では、「地域等の活力を積極的に活用した管理を行うこと」が条件として明示されている。これは、指定管理者制度を活用して地域の活性化を図るという自治体の政策目的そのものであるといえるが地域の雇用創出を促進することは指定管理者制度の趣旨に合致するものでもある※23
 選定手続の透明性・公平性・公正性という点では千代田区や川西市、松本市等で選定委員会の設置を条例上明記し、松本市条例では、選定委員の構成なども具体的に示している。また、川西市条例では選定委員会を正式な市長の諮問機関として設置することを明記している。選定委員会の正当性を高める上では望ましいと思われる。

○ 仲南町(香川県)公の施設の管理者の指定等に関する条例 
(管理運用方針の策定)
第6条 町は、設置条例の掲げる施設目的を実現するように、次の各号の事項について定める管理運用方針を公の施
設ごとに定める。
一 基本方針
二 管理運用の基準
三 行政処分等の権限を含む業務の範囲
四 管理指定の期間
五 使用料の扱いを含む金銭収受の条件
六 施設の維持管理の条件
七 備品整備の条件
八 安全衛生管理の基準
九 その他必要な事項

○ 京都市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例
(指定候補者の選定)
第4条 市長等は,前条第1項の規定による申請があったときは,次に掲げる基準に照らして審査したうえ,指定管理者の候補となる団体(以下「指定候補者」という。)を選定するものとする。
2 市長等は,前項の規定による選定と同時に,申請団体のうち指定候補者以外の団体(以下「非選定者」という。)を指定管理者に指定しない旨の処分をしなければならない。

○須崎市(高知県)公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例
(公募によらない指定管理者の候補者の選定等)
第5条 市長等は、施設の性格、規模、機能等を考慮し、設置目的を効果的かつ効率的に達成するため、地域等の活力を積極的に活用した管理を行うことにより事業効果が明確に期待できるとき、又は第2条の規定による公募により施設を管理することが適当でないと認めるときは、公募によらず、市が出資している法人又は公共団体若しくは公共的団体(以下「公共的団体等」という。)を指定管理者の候補者として選定することができる。公募を行ったにもかかわらず申請がなかった場合も、同様とする。
2 市長等は、前項の規定により選定するときは、あらかじめ第3条各号の事項について公共的団体等と協議を行うものとし、前条各号の基準に照らし判断するものとする。

○川西市(兵庫県)公の施設に係る指定管理者の指定の手続等に関する条例
(選定委員会の設置等)
第13条 公募による候補法人等の選定を適正に行うため、法第138条の4第3項の規定に基づき、市長等の付属機関として川西市指定管理者選定委員会(以下「選定委員会」という。)を置く。
2 選定委員会は、市長等の諮問に応じ、第4条第1項及び第2項(第5条第2項において準用する場合を含む。)の規定による選定に関する重要事項を審議する。
3 選定委員会は、必要と認めるときは、申請法人等に対し、資料の提出又は会議に出席して意見を述べることを求めることができる。
4 選定委員会の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
5 前各項に定めるもののほか、選定委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則又は教育委員会規則で定める。


A 長や議員の兼業禁止規定

 「指定管理者制度」は、これまでの管理委託という民法上の「契約」でおこなっていた「委託」を、行政処分という措置により公の施設の管理を指定した事業者に行わせることを可能にしている。そして指定は「契約」ではなく「行政処分」となったことで、地方自治法の契約に関する規定は適用されないため、請負でもなくなり、自治法第92条の2、第142条による議員や長の兼業禁止規定も適用されないことになる。指定管理者制度は1年契約が原則の管理委託と違い、複数年で管理を任せることになることからも、入札・契約制度で培ってきた公平性・公正性をどのように担保していくのかが課題とされる。
 千代田区では通則条例のなかで欠落事由として議員、長、助役、収入役、教育委員会委員が代表者その他の役員である団体は指定管理者たることができないと定めている。同じように議員や長の兼業禁止を定めている多摩市の条例では議員、長、助役、収入役、教育委員会委員又はその配偶者若しくは2親等以内の親族が代表者その他の役員である団体は指定の申請をできないと規定し、千代田区条例よりさらに兼業禁止の幅が広く設定している。青梅市条例では自治法第92条の2、第142条を準用すると規定し「契約」と同じ内容での兼業禁止を担保している。自治体独自で兼業禁止規定を設けることは必要なことだが指定管理者による委託を従来の「契約」と同じ扱いとしている青梅市条例は自治体の委託に対する一貫性を明確にしている点で先進的であるといえる。
 一方、都市部の自治体と過疎地域の自治体では指定管理者たる事業者数の違いがあり、過疎地域の自治体ではマンパワーに頼らざるをえない状況もあることから一概に全国的に兼業禁止規定が望ましいとはいえないとも考えられる。そのことから自治体の規模や地域性により規定の内容は違う形になることが想定されるが、何かしらの兼業禁止規定を明確に規定しておくことが必要といえる。すでに指定管理者が導入されている杉並区やさいたま市※24 、斐川町などでは議員が経営する、もしくは役員である法人が指定管理者となる事例を見ることができる。指定管理者制度では指定管理者は議会の議決を経て決定されるため、議会の議員の構成等により議会が自由に指定管理者を決めることができるということにもなりかねない。自治体の「契約」について自治法が兼業禁止を禁じている歴史的な背景を鑑みれば、自治体の委託事業者の決定に際し議会の裁量が及ぶということは、昨今の入札・契約制度改革の流れに逆行しているものであり、指定管理者制度の公平性・公正性・透明性を自治体がどのように担保していくのかは、行政と議会の関係を含めた大きな課題である。
 なお、設置条例のみで指定管理者制度の対応を行っている事例では、政治倫理条例など他の条例で兼業禁止を担保している自治体も見受けられるが、今後どのような形で対応していくのかは検討を要するところでもある。

○千代田区(東京都)公の施設に係る指定管理者の指定手続等に関する条例
(欠格事由)
第6条 区議会議員が、代表者その他の役員である団体は、指定管理者たることができない。
2 区長、助役又は収入役が、代表者その他の役員である団体(区が資本金その他これに準ずるものの2分の1以上を出資している団体を除く。)は、指定管理者たることができない。
3 教育委員会委員が、代表者その他の役員である団体(区が資本金その他これに準ずるものの2分の1以上を出資している団体を除く。)については、当該教育委員会の職務に関して、指定管理者たることができない。

○多摩市(東京都)公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例
(指定管理者の指定の申請)
第3条
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる団体は、指定管理者の指定の申請をすることができない。ただし、第3号については、教育委員会の職務に関する公の施設に限る。
(1) 市議会議員又はその配偶者若しくは2親等以内の親族が代表者その他の役員である団体
(2) 市長、助役若しくは収入役又はその配偶者若しくは2親等以内の親族が代表者その他の役員である団体(市が資本金その他これに準ずるものの2分の1以上を出資している団体を除く。)
(3) 教育委員会委員又はその配偶者若しくは2親等以内の親族が代表者その他の役員である団体(市が資本金その他これに準ずるものの2分の1以上を出資している団体を除く。)

○青梅市(東京都)公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例
(兼業の禁止)
第11条 法第92条の2、第142条(法第166条第2項および第168条第7項において準用する場合を含む。)および第180条の5第6項の規定は、指定管理者について準用する。この場合において、法第92条の2および第142条中「当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人」とあるのは「指定管理者」と、第180条の5第6項中「当該普通地方公共団体に対しその職務に関し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人」とあるのは「その職務に関する公の施設の指定管理者」と読み替えるものとする。


B 情報公開

 公の施設の管理・運営を民間に委ねるにあたり問題となるのが情報公開についてである。しかし、民間企業やNPOなどの民間事業者は「実施機関」の範囲外にあり自治体の情報公開条例をそのまま適用することはできないため、指定管理者制度の導入に際し情報公開条例の改正が行われているが、文書の公開に努めるといった努力規定がほとんどとなっている。そのため情報公開の方法については事実上指定管理者側の姿勢に委ねられているといえる。公の施設の「使用許可」など公権力の行使を含めこれまでの委託制度にくらべ指定管理者は大きな権限を担うことを考えれば、自治体の「実施機関」として情報公開条例に規定し情報公開を担保するのが望ましい。藤沢市では情報公開条例上に指定管理者を「実施機関」と明確に位置づけている。自治体によっては「実施機関等」の等に指定管理者が含まれると解釈し運用しているところもあるが、指定管理者の権限を考えれば藤沢市のように明確に規定するのが望ましい。
 一方で民間事業者にとって決算情報等の情報公開にあたっては会計制度の壁もある。企業会計では、1法人につき1つの計算書類を作成する単一会計であるため法人全体の会計情報となってしまう。そのことから指定管理者が当該事業についての会計情報をすみやかに公開するためにはあらかじめ別会計とする必要が生じる。京都市条例ではあらかじめ施設の管理業務に係る経理を区分して行うよう条例に規定している。
 なおNPO法人は法令で区分経理の原則(特定非営利活動促進法第5条)が義務付けられているため企業会計のような問題が生じることはない。

○藤沢市(神奈川県)公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例
(個人情報の取扱い等)
第8条
2 指定管理者(公の施設を利用する権利に関する処分の権限を有するものに限る。)は,その管理する公の施設の管理の業務により保有することとなつた情報について公開請求があつたときは,藤沢市情報公開条例(平成13年藤沢市条例第3号)の定めるところにより公開しなければならない。

○藤沢市情報公開条例
(定義)
第4条
2 この条例において「実施機関」とは,市長,教育委員会,選挙管理委員会,公平委員会,監査委員,農業委員会,固定資産評価審査委員会,議会,地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項の規定に基づきこの市の公の施設の管理を行わせる指定管理者のうち当該公の施設を利用する権利に関する処分の権限を有するもの(以下「処分権限を有する指定管理者」という。)及び公有地の拡大の推進に関する法律(昭和47年法律第66号)第10条第1項の規定により設立した藤沢市土地開発公社(以下「土地開発公社」という。)をいう。

○ 京都市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例
(区分経理)
第9条 指定管理者は,指定施設の管理の業務に係る経理とその他の業務に係る経理とを区分して整理しなければならない。


C 指定期間 通則条例での期間設定

 指定管理者制度では従来の「契約」とは違い、期間を定めて複数年での指定が可能となっている。法令上特段の期間の定めは置いていない。そのことから数年から数十年にわたる期間を設定することも自治体の判断に任されている。指定の期間については多くの自治体では通則条例上で規定せず施設の性格や目的にあわせ指定期間のガイドラインを定め、指定管理者制度を導入する個別施設の条例ごとに期間の定めている例が多い。しかし、江東区や豊田市のように通則条例に規定している事例もある。
 公の施設には公民館や体育館などの貸館業務が中心の施設もあれば、保育所や高齢者施設のように人的サービスを行う公の施設もある。通則条例で指定の期間を規定することは指定管理者制度の透明性を高める上では意義があるともいえるが、公の施設の目的や性格にあわせた柔軟な対応を阻害することにもなりかねないことが考えられるため、通則条例での指定の期間の規定については慎重な対応が必要である。

○江東区公の施設に係る指定管理者の指定手続等に関する条例
(指定管理者の指定期間)
第3条 指定管理者が公の施設の管理を行う期間は、指定の日から起算して5年とする。ただし、当該公の施設の性格、規模等を考慮して区長等が特に認めた場合は、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、指定期間満了後引き続き指定することを妨げない。

○豊田市(愛知県)公の施設に係る指定管理者の指定手続等に関する条例
(指定の期間)
第4条 指定管理者が施設の管理を行う期間(以下「指定の期間」という。)は、指定を受けた日から5年以内の期間とする。ただし、施設の性質、設置目的等からこれにより難い施設については、この限りでない。


D 行政財産の目的外使用・再委託に関する規定

 行政財産の目的外使用の許可権限は、指定管理者に委任することが出来ないとされている。しかし、指定管理者である民間事業者が施設の収益事業を強化するために目的外使用をなし崩し的に行う可能性を否定することはできない。そのことから指定管理者による施設の目的外使用については、住民の福祉の増進のために税金で設置したという公の施設の性格からして、指定管理者による権限の濫用や販売行為などの目的化を防ぐ手立てが必要である。
 しかし、ホールや会館などにおいて、イベントの一環として主催者が物品などを販売する行為などは施設の円滑な管理運営、催し物の収益性を考えれば当該施設の目的内使用と解釈することもできることから、目的外使用と目的内使用の線引きをすることは実際は困難であるともいえる。相模原市男女共同参画推進センター条例では物品販売等の目的外使用の許可を指定管理者の権限として条例で明確に規定している事例である。同条例では販売行為等の禁止を規定している第17条では物品の販売行為には市長の許可が必要とされているが、指定管理者が行う業務の範囲を定めた第25条の第7号では販売行為等の許可に関する業務が指定管理者の業務とされており矛盾が生じている。
 一方、斐川町では施設の業務目的以外の利用を条例で禁止している。業務目的外の施設利用を条例により禁止することは極めて珍しい例だが、指定管理者制度の趣旨を鑑みれば指定管理者の創意工夫を妨げることにもなりかねない規定といえる。
 業務の再委託を規定した条例としては、業務の実施に専門的知識、技能、資格又は経験を必要とし、かつ、指定管理者が自ら行うことが困難なものに限り再委託を認めている飯田市条例がある。

○相模原市立男女共同参画推進センター条例(神奈川県)
(販売行為等の禁止)
第17条 何人も、センターにおいて、物品の販売、広告、宣伝、寄附募集行為その他これらに類する行為をしてはならない。ただし、市長の許可を受けた場合は、この限りでない。
(指定管理者が行う業務の範囲)
第25条 指定管理者は、次に掲げる業務を行うものとする。
(1) センターの休館日を定めること(第10号に規定する業務の遂行上必要と認められる場合に限る。以下この号において同じ。)、休館日を開館日とすること、及び利用できる時間の変更に関する業務。ただし、センターの休館日を定め、休館日を開館日とし、又は利用できる時間を短縮する変更をするときは、あらかじめ市長の承認を受けなければならない。
(7) 販売行為等の許可に関する業務

○斐川町立東部保育所の設置及び管理運営に関する条例(島根県)
(業務外使用の禁止等)
第9条 指定管理者は、東部保育所の施設等を法第39条第1項に規定する業務以外に使用し、又は使用する権利を譲渡し、若しくは転貸してはならない。

○飯田市(長野県)公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例
(業務の委託の禁止)
第6条 指定管理者は、当該指定管理者が管理する公の施設の管理及び運営に関する業務を他の者に委託することができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する業務にあっては、この限りでない。
(1) 施設の維持又は施設を使用して行う事業の運営に関する業務のうち、当該業務の実施に専門的知識、技能、資格又は経験を必要とし、かつ、指定管理者が自ら行うことが困難なもの
(2) その他市長が規則で定める業務

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5 おわりに

 「官から民へ」「地方で出来ることは地方へ」という国の方針を自治体に置き換えると「地域のことは地域で決定する」ということが出来るのではないだろうか。そして地方分権時代に自治体に要請されるであろうことは、地域の事情をいかに把握し効率的な行政サービスをどのように実現するかである。そのようななかで登場した指定管理者制度は分権時代を迎えるにあたり自治体の法務能力が試されているということができるのではないだろうか。従来型の自治体法務分野は、国の示すマニュアルに沿う法解釈をすれば、不足が生じることはなく十分であった。いうなれば国が示した制度の詳細に沿って自治体が自治体運営を行うことが自治体の役割とされがちだったともいえる。しかし、1960年代の東京都の「公害防止条例」を皮切りに1970年代には急激な開発に対応するための「開発指導要綱」、1980年代の景観を中心とした「街づくり条例」など革新首長を頂く自治体を中心に地域課題を抱えるための積極的な自治体法務が展開され国をも動かすことになった事例もある。しかしながら、大多数の自治体は相変わらず「政策」ではなく「施策」の実施主体としての役割を担う存在であり続けてきた。
 しかし、2000年に施行された地方分権一括法による機関委任事務制度の廃止は法令を遵守し「通達」「通知」に従い、個々の事業をいかに無難に処理するか、どうすれば責任をとわれないかといったことを重視しがちであった自治体に自立を促すこととなった。それは、法令の解釈権において、国と自治体の地位が対等になったとされる根拠でもある。また、これまで実質的に拘束力を持っていた各省庁の「通達」「通知」も例外なくすべて「技術的な助言」に過ぎないことに改められている。福祉行政、環境行政、都市計画など複雑かつ高度な対策対応が自治体に求められている今、自治体は自主的な法解釈、すなわち政策法務体制の確立を急がねばならない状況になりつつあるといえる。
 分権時代に入り自治体法務の様相は大きく変化している。施策実施主体から政策実施主体としての自治体像が求められるからである。政策は積極的かつ具体的に市民社会に介入する行政分野に属するものである。つまり、政策法務とは各自治体が基本構想をベースに打ち出した政策を実現するためのルールを決定していくための技術力と言える。
 政策法務思考の説明として、政策的に妥当な内容として出来るだけ法的合法性を与えるように、立法・解釈・運用・訴訟で努力すること、すなわち、合法性を政策的妥当性に可能な限り適合させることが必要であるという考え方はもちろんであるが、合法性を優先させることは政策的妥当性を阻害することもあり得る。つまり、政策を実現するために自治体に必要なルールは必ずしも「法律の範囲内」に留まるわけではないという大前提を認識することが、政策法務の本質である。今まで、条例は法律に抵触することなく策定しなければならないとされてきた。しかし、都市部や過疎地など自治体ごとに抱える問題は地域性により異なり実際には例外が存在せざるをえない状況にある。各自治体が政策実施する際に法律ありきの考えで対応できない事項にぶつかったとき、それを例外化する技術の向上は分権時代には不可欠である。
 指定管理者制度の導入にあたっては、多くの自治体で混乱している様子を見て取ることができる。そして多くの自治体では先行する自治体の様子を横目で見ながら対応を図っているといっていいのではないだろうか。しかし、制度設計のすべてが自治体の条例に委ねられ、国が詳細な通知や雛形、マニュアルなどで口出しないということは、それこそ自治体の政策法務能力を発揮する舞台であるといえるのではないだろうか。分権時代は指定管理者制度のような自治体に設計を任せる制度が多く出てくることは間違いないだろう。そのことから、指定管理者制度は自治体の法務能力が試される試金石だともいえるかもしれない。

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参考文献

  • 篠原俊博「地方自治法の一部を改正する法律の概要について」地方自治669号
  • 村上順「日本の地方分権」弘文堂2003年
  • 成田頼明「指定管理者制度のあらましと運用上の課題」翔(はばたき)bW特集「指定管理者制度」
  • 成田頼明「指定管理者制度のすべて」第一法規2005年
  • 加藤隆佳「公の施設の指定管理者制度」自治実務セミナー43巻2号
  • 稲葉馨「公の施設法制と指定管理者制度」法学67巻5号
  • 神奈川県政策法務研究会「公共施設への指定管理者制度導入に伴う課題と今後の方向性について」自治体法務NAVI3号
  • 竹林昌秀「指定管理者による公の施設の管理運営の制度設計(上)」地方財務2003年12月号
  • 磯崎初仁「政策法務の新展開」ぎょうせい2004年(土田伸也執筆)386
  • 地域協働型マネジメント研究会「指定管理者ハンドブック」ぎょうせい2004年
  • 文化政策提言ネットワーク「指定管理者制度で何が変わるのか」水曜社2004年
  • 出井信夫「指定管理者制度」学陽書房2005年
  • 安達和志「行政上の契約・協定の法的性質」行政法の争点(第3版) 有斐閣2004年
  • 田中孝男「公の施設の指定管理者制度について(報告と若干の注釈) http://www1.ocn.ne.jp/~houmu-tt/02-05010302.htm 2005年
  • 福士明「指定管理者制度の法的論点・ポイント」自治体法務研究 bP
  • 菅原敏夫「指定管理者制度の課題」月刊地方自治職員研修 517号
  • 三野 靖「指定管理者制度」公人社2005年
  • 渡邉康之「『公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律』に基づく入札・契約手続きに関する実態調査の結果等について」地方自治688
  • 北村喜宣「分権条例を創ろう!」ぎょうせい2004年
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