※この文書は録音テープをテキスト化したものです。正式な議事録ではありません。
※一般質問の模様をビデオ映像で公開しています。
2004年12月1日 一般質問(質問原稿)
野崎孝男議員
民主新緑・無所属議員団を代表して一般質問を行います。区長ならびに関係理事者の誠意ある答弁をもとめるものであります。
法務体制の整備について
まず、法務体制の整備について質問いたします。
2000年4月に施行された地方分権一括法の最大の成果は、機関委任事務が廃止され、自治事務に対する国の各省庁の通達・通知は例外なく「技術的な助言」に過ぎないものと改めたことであります。言い換えれば、自治体は、自治体自らの政策的な判断による行政ではなく、単に法令や省庁の通達・通知を遵守しさえすれば良く、個々の事業をいかに無難に処理するか、どうすれば責任を問われないか、といったネガティブ思考による事務執行をする必要がなくなったことであります。
このことは、法令の解釈権において、国と自治体の地位が対等になったとされる根拠でもあり、いまや自治体は、かつてのように「国の事務」を執行する国の下請け機関でなくなったことは間違いありません。
では、そのことで実際にどのような変化が起きているかというと、国の法令では手薄になっている住民参加・住民自治を実現するために制定されている自治基本条例や、国の法令が対象としていない領域について独自に対応するために制定されている規制型まちづくり条例など、自治体独自の法解釈を伴った政策的条例が多く誕生しています。それらの背景には、福祉行政、環境行政、都市計画など行政機能が拡大し、複雑かつ高度な対策・対応が自治体に求められていることがあげられます。
また、これまでその手軽さゆえに利用されてきた指導要綱が、1993年に制定された行政手続法及びその後、全国の自治体で制定された行政手続条例により一定の限界が露呈すると共に、行政指導は相手方の任意の協力の下に成り立つものであり、明確に行政指導に従わないと意思表示したものには、もはや行政指導の効果は及ばないことが明らかになっています。
この行政手続法の出現により、指導要綱は地域の課題を解決するために、自治体立法機能をも有するものであるという主張は明確に否定されています。さらに、2000年の分権改革により、地方自治法14条1項、2項で条例制定権が整理され、自治体の権限として「すべての事務に条例が制定できる、すなわち行政指導であったとしても要綱ではなく条例で対応できる」ことと、自治体の義務として「権利義務規制をするのなら条例化によらなければならない」ということが明確になりました。
そのような背景から、今後の自治体運営では法務体制の強化は避けては通れないものであると考えますが、区長のお考えはいかがでしょうか、ご見解をお伺いします。
次に、法務体制の充実を図るといっても、ただ法規を担当する係の人数を増やせばいいということにはなりません。そこには今後の練馬区の法務を考える上での戦略が必要になります。そこで重要になってくるのが「政策法務」という視点です。
自治体政策法務とは地方自治の本旨の実現のために、住民の福祉増進の観点から必要と考えられる政策を、憲法をはじめとする関係法体系のもとで、自主的な法解釈を踏まえて、いかに、適法・合理的に制度化・条例化するか、適法・効果的に運用するかに関する、思考と実践であります。例えると、全国一律で行われてきた建築基準法が、雪の積もる地域と沖縄のように雨や台風の多い地域とでは建築物の構造が違うべきだろうと誰もが感じていることを、独自の法解釈を行いそれぞれの地域にあった建物やまちづくり、人々の事情や地域の風土に見合ったサービス・基準を、条例で作っていくというもので、いうなれば地域社会の共通的な価値の実現を図る上でのルールつくりともいえます。
そのような点からも今後の自治運営には「政策法務」は欠かせないものであると考えます。
以上これまで述べてきた理由をもとに提案も含め区長に2点ご質問をいたします。
- 「事業部制実施方針」の「組織編制の考え方」において、スタッフ部門の役割として政策法務が掲げられておりますが、法務を充実させるための手段として、現在総務課に置かれている文書係・法務主査という体制から「政策法務」を中心として扱う「政策法務課」の整備が必要だと思いますが、区長のご見解をお伺いします。
- どのような場合に、条例により政策を実現していくのか、例えば、(1)自治体の組織や政策、施策、事業、事務に関し重要な事項に対する「法」による規律についての基本的な考え方、(2)これに基づく条例・規則の制定についての基本的な考え方、(3)条例案等への原案立案過程への住民参加の基本的な考え方、(4)条例等の運用の基本的なあり方、(5)条例等の評価に関する基本的なあり方など、条例の守備範囲をあらかじめ明確にするための「自治体全体の条例整備方針」を策定するべきだと思いますが、区長のお考えをお伺いします。
以上法務体制の充実について質問を行いましたが、地方自治法244条の2第3項の指定管理者制度を見てもわかるように、今後国が法律の大枠だけ示し、あとは各自治体ごとに個別対応を迫られることが多くなることが予想されることからも、法務体制の充実は急務だと思いますので前向きな取り組みを期待いたします。
自治基本条例について
次に仮称・自治基本条例について質問いたします。
近年、自治基本条例を制定する自治体が増えている背景には、国や地方の政治・行政の力だけでは、多様化する地域を支えていくことができなくなったことや、地方分権によって自治体が独自性と責任を有するようになり、国や都などの後見的介入が一定のルールの下でしか行えなくなったことが考えられます。このことは、地方自治体の行動を監視し、過ちを指摘し、是正していく、その責任が、国や都が口出ししない分だけ市民に移り、市民は選挙を通じて行政運営を信託した以上は、その失敗についても責任を取るという住民自治の本来の形に近づいたといえます。つまり、意味のある、有効で高品質な公共サービスを提供するには、行政だけではなく、市民セクターや市場セクターも含めた、多くのプレーヤーが参加することが必要だと、誰もが認識するようになり、これが自治基本条例の制定を促している大きな要因と私は考えます。
自治基本条例とはこのような大きな時代の変化を受けたもので、かつ、その実効性が問われる地方自治体の実法的存在といえます。しかし、現在、地方自治法等の法律との関係も含めて、その内容、法的効果、機能については、なお検討すべき点が少なくありません。むしろ、一つひとつ課題をクリアして、実例を積み上げる中で、条例自体を進化させていくことが求められる「進化する条例」といえます。つまり、何を持って自治基本条例を定義するかという大命題は、各自治体が目指す自治の形により異なって当然だということであり、他の自治体の条文を引き写し、通常の条例と同様の手続きで策定した場合、いくら自治基本条例の名を冠してもその体をなさないということです。
したがって、自治基本条例の制定にあたっては、自治体ごとにその前提となる地域性、抱えている課題などが違うことから、その策定プロセス自体が区独自のものであるべきことを強く認識するべきであります。
では、その策定プロセスはどのような形が望ましいのでしょうか。さまざまな先行事例をあげることはできますが、これまで述べてきたとおり、自治基本条例に同じものはないわけで、他の自治体の策定プロセスは参考にしかなりません。しかし、なくてはならない共通した重要なポイントは住民参加による策定プロセスを踏むということです。それは企画部長の「当区が取り組む自治基本条例は、練馬区という団体としての自治の推進と、練馬区民の意思に根ざした住民参加の仕組みづくりを基本として制定するべきものだと考える」という答弁にもあるように、住民参加による策定が不可欠だということに異論はないと思います。
そこで具体的にどのような住民参加のプロセスを踏むのかが重要になってきますが、幸いにも、練馬区には、現在策定に向けて検討されている「まちづくり条例」や今年4月に施行された災害対策基本条例、さらに都市計画マスタープランや区民環境行動基本指針など、長い時間をかけて作り上げてきた住民参加のノウハウが豊富に蓄積されています。しかし、そうしたノウハウを有している練馬区でありますが、15年12月に自治基本条例の制定が発表されて以来、いまだに具体的な動きが見えてこないところに大きな不安を感じています。
なぜならば、自治基本条例が練馬区民の意思に根ざした住民自治の仕組みつくりの基本として制定が考えられているわけで、その点からすると自治基本条例の策定プロセスが、今後の練馬区の住民参加、住民参画の見本となるべきものだからです。これまで述べてきたように自治基本条例はその性格上、市民自身がどれだけその地域社会の自治に責任を負うかを含むので、市民自身の手で作るという構えがどうしても必要になることから、行政あるいは法律家が条例案を作って「これが案です。パブリックコメントで意見をください」「パブリックコメントを行ったので住民参加です」となってしまうことがあれば、スタートから住民参加・参画を制限してしまいます。
以上、自治基本条例制定における、策定プロセスの重要性などを述べてきましたがそれらの点を踏まえて以下4点について区長のお考えをお伺いいたします。
- 今現在、どのようなことが検討され、どのような議論が行われているのでしょうか?
- 3年という期限がある新行革プランに自治基本条例を載せるに当たっては、その必要性と、また策定にあたり、プロセスも含め3年間という期間で十分だという判断があったと思われますが、具体的にどのような自治基本条例を想定し、どのようなプロセスを考え、新行革プランに折り込んだでしょうか?
- 他の条例との体系化及び整理については具体的にどのように行われるのでしょうか?
- パブリックコメントのみで条例の制定を行うことはありえないと思いますが、そう考えてよろしいのでししょうか?
自治基本条例によってすぐに市民生活や福祉など、何かが変わるわけではありませんが、行政の仕事に縛りが出てくることは事実です。そして乗り越えなければならない課題も多くあると思いますが、粘り強く取り組んでいっていただくことを期待しています。
少子化対策について
次に少子化対策。その中でも父親向けの対策について質問いたします。
次世代育成支援行動計画策定に係るニーズ調査報告書によると、独身及び子どものいない世帯は「これまで子どもに関わったことがありますか?」という質問に対して、43.5%が子どもと関わった経験がほとんどないと答えています。
一方、産後の状況に関するアンケートを見ると「子育てに関する悩みや不安などの相談相手」では、84.1%が配偶者・パートナーと答えると共に「配偶者・パートナーに育児参加をしてほしいと思う、もしくは思ったこと」という質問では「気遣いをしてくれる」が33%で最も多く、「相談に乗ってくれる」28.6%と合わせると、半数以上の人が、配偶者・パートナーに対しメンタル的なサポートを望んでいると見ることができます。さらに、注視すべきことは「思うもしくは思った」ということは、実際に満足できていないことを表しており、なぜ、「相談、気遣い」などがうまくできないのかを検証することが重要と思われます。
先日、新たに子を持つパパやママを対象とした、「パパとママの準備教室」に参加した方々に参加の理由を尋ねてみると、女性の答えは「父親に実感を湧かせたい」「責任感を持ってもらいたい」「初めてで心配なので、夫にも理解して欲しい」「夫にパパとしての自覚をもってもらいたい」「女性の体の変化などを知ってもらいたい」と男性に対する啓発が目的であり、一方で男性を見ると「妻に誘われ、ためになると思い参加した」「妻に誘われ楽しそうと参加した」「誘われて、まあいいかという感じ」と受動的な答えとなっています。
以上のことから、子どもを持つ男性の多くは子育てに対して、スタート時点から受身であることが浮き彫りになります。
そこで、子育て施策の先進都市とされるカナダのトロント市の事例をひとつ紹介いたします。トロント市にはA5版約30頁の父親向けの子育て指南書「ハンズ・オン・ダッド」というものがあります。この冊子はカナダの心理学財団が企業とタイアップして編集している冊子なのですが、価格は日本円で40円、入手しやすくコンパクトで、妊娠中もしくは産後の女性のメンタル面などが、父親にもわかりやすく、実感できるような、やさしさあふれる文章で書かれています。
例えば、家事援助の欄をみると「最初の数週間は、あなたのパートナーは赤ちゃんと自分自身の産後の回復に気持ちを集中する必要があります。彼女の時間とエネルギーの大半は、このために使われてしまいますから、あなたの仕事は、彼女がほかの事に時間をとられずにすむようにすることです。もしあなたが食事の支度、家事、用足しをこなせるのであればそれは素晴らしいことです。もしそれらをすべてはできないということであれば、手伝ってくれる人を組み合わせて手配したり、お手伝いさんを雇ったりすることで仕事は軽減されるでしょう。」とあり、さらに「お客さんが多かったり、長居したりするとパートナーが疲れるから、客の相手は自分がするといって引き受けよう」「パートナーは赤ちゃんの世話で頭が一杯になっていて、電話一本かけるのも登山ほどに大変に感じているかもしれないから、ちょっとした専門家のアドバイスを聞く電話は代わりにかけてあげよう。」などが体験談も含めて簡潔に書いてあります。また、「授乳についての父親が知っておくべきこと」という欄では、「父親のサポートが授乳を成功させる鍵です」と始まり具体的には「授乳の時にはのどが渇くため、パートナーが楽になるよう、赤ちゃんを着替えさせ、寝ているパートナーのところに連れて行こう。一杯のジュースか水を取ってきてあげよう」などと書かれています。そして最後に「母乳は最初は数日はなかなか自然にはでてこないものだ」「授乳は母親と赤ちゃんが一緒に学んでいく技術」という風に締めくくられています。
父親がこのような知識を持ち、心構えを持っているだけで、パートナーの心の負担が軽くなり、子育ての悩みが軽減していくことは間違いないことと思います。
一方、現在、練馬区では、パパとママの準備教室に参加した父親には父子健康手帳が配布されておりますが、練馬区での出生数がおよそ6000人なのに対し、準備教室の参加人数はおよそ700人前後となっています。誤解のないように言うと、準備教室は好評で募集後すぐ満員になっている素晴らしい事業です。しかし、定員の限られた準備教室に参加する父親は、子育て支援に積極的な父親だと見ることもできますので、今後は残りの5300人の父親の意識をどのように向上していくのかが課題であり、そのために手軽にできる事業として父子手帳をすべての父親に配布することが望ましいといえます。
また、配布されている父子健康手帳を見てみると、赤ちゃんの沐浴のしかたやオムツの取り替え方、そして料理の仕方まで掲載されていますが、技術的な側面が中心の参考書という感じが強く、その点「ハンズ・オン・ダッド」はメンタル面を中心に実感できるような文章で書かれています。
練馬区が今年リニューアルした母子手帳では、職員の皆様が知恵を出し合い、使いやすくわかりやすい手帳を作り上げています。しかし、現在配布している父子健康手帳は出版社が発行しているものを買い取り、配布しているものなので、練馬区の情報が掲載されていないなど、まだまだ改善の余地が多くあります。母子手帳の例を見るように練馬区には手帳を作り上げるノウハウ、能力そして職員の方々の「区民のために」という強い思いがあります。その点からも練馬区オリジナルの父子手帳を作成し、すべての父親に配布されることを強く要望するものです。費用対効果の面から見ても、練馬区での出生数が6000人前後だとすると、すべての人に配布するとして母子手帳が二冊で200円のコストですので、一冊あたりのコストを100円と見積もっても年間60万円ですみます。
さて、なぜ父親の子育て支援策が少子化対策なのかというと、それは少子化を改善するという究極のアウトカムのもとに、具体的な中期目標として保育の拡充、子育て支援などいくつかの方策があげられますが、これらの中期目標を達成するためにどのような具体策が必要なのかを考えると、そのひとつの手段の実効性を図るアウトカム指標として家庭生活の満足度の向上があり、それを実現する手段としては父親の子育てへの理解度を高めることが有効であるからです。少子化を改善するためには様々な角度からのアプローチが必要になり、その点からも父親への子育て啓発活動は意義のあるものだからです。
さらに、児童相談所への相談が近年増加傾向にある児童虐待の問題では、おととい厚生労働省が発表した調査によると、全国の児童相談所が2003年度に対応した虐待相談件数は2万6569件で、前年度より約2800件増え、過去最高を更新したことが明らかになりました。また、相談の内訳をみると身体的虐待が1万2022件と最も多く、次いで育児放棄、いわゆるネグレクトの1万140件とつづいています。また、東京都が13年10月に発表した「東京都の児童虐待の実態−東京の児童相談所の事例に見る−」を見ても「虐待に繋がると思われる家庭の状況」についての質問に対し、20.1%が夫婦間の不和、17%が育児疲れをあげています。さらに、13年度の5681件から15年度は1万2406件と都内全体で2倍を超える相談件数が寄せられているドメスティックバイオレンス、いわゆるDVの問題でも育児に対する精神的ストレスにより引き起こされる、夫婦間の言葉の暴力での被害が報告されていることから、子どもが誕生する以前に父親の育児への理解を向上させることは、育児をめぐるトラブルを未然に防止することにもつながり、長い目で見るとこれらの問題を減少させるという波及効果も期待することができます。
練馬区の人口と世帯を見てみると、一世帯あたりの世帯人員はほぼ一貫して減少し、核家族化と単独世帯化が進んでいます。そのため身近に子育てに協力してもらえる人が少なくなり、子育てにおけるパートナーの役割がより大きくなっているといえます。一方で離婚率は、昭和40年以降上昇傾向にあり、練馬区の平成14年の人口千人あたりの率は2,44と全国平均の2.30、東京都平均の2.34を上回り戦後最高を記録しています。父親の育児への知識を広めていくことは、それらの問題の改善にも寄与することも期待できます。
そして、練馬区が先進的にこのような取り組みを行うことで、「るるぶ練馬区」のように、他の自治体の後追いを促し、ひいては全国で父子手帳がスタンダードになることを強く願っているものであります。区長のご英断を期待いたします。
以上で一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
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